第60期王位戦第3局(豊島王位vs木村九段)
2連勝と波に乗る豊島王位
前局は木村九段優先だったものの、僅かなほころびをついて豊島王位が一気に攻めきった
さあ、注目の第3局を見ていこう
予想されていた戦型とは違い、矢倉の出だしとなった。
将棋の純文学だが、タイトル戦に登場するのは久しぶりな気がする。
局面は豊島王位が木村九段が囲いきる前に積極的に攻め始めたところ
近年タイトルを獲得している豊島王位の棋風は積極的果敢に攻め込む棋風だ
そして駒損をものともしない銀上がり
駒を前に前に進めていく
木村九段は駒得のチャンスだが、豊島王位の駒がどんどん攻め込んできては受け止められない
難しいやりとりがあったが、一度局面を落ち着ける。
こうなると木村九段も十分か
互いに強みを出しあえる展開となった
今度は木村九段が攻める番だ
しかし攻める駒は相手の玉ではない。
攻めの要の飛車を攻める
桂馬も投入して攻め込む
豊島王位の飛車がどんどん狭くなっていく
もはや盤面の右下は木村九段のエリアだ
将来入玉模様となればかなり手堅い
豊島王位の飛車はほとんど働かなくなった
少ない攻め駒で繋ぐしかない豊島王位
渾身の勝負手がでた!
控え室での評判はイマイチかもしれない。
ソフトの評価も最善手ではないかもしれない。
しかし将棋は2人の勝負師が作り上げるものだ。
肉を切らせて骨を断つ
この言葉が相応しい一手だろう。
木村九段も対応を誤れば一気に負けてしまう。
この盤の上には2人の勝負師の命を賭した切り合いが繰り広げられているのだ
豊島王位は苦しいながらも厳しい攻めを繰り出していく
木村九段は優勢ながらも少しも気を抜けない
ヒタリと一歩近づけば、ヒラリと一歩遠ざかる
喉元に切っ先を突き付けあった鍔迫り合い
この戦いを一歩リードしたのは木村九段
じわじわと豊島王位の攻めを受止め自由を奪っていく
もはや豊島王位は片腕だけで切り合いをしているような状態だ
もはや片腕の相手を倒すのは簡単だろうか?
全くそうではない
なぜなら相手は決死の覚悟があるからだ
熟練の勝負師は絶対に自分が死なない道をゆく
いわば盾も手に入れた木村九段
そして次は弓矢で攻めるといったところか
豊島王位の攻めが遠く届かないようにして、まずは小駒を上手く使って攻める
将棋とはなんとも面白いもので、そっと駒を動かす一手とパチン!と駒音高く指す一手は同じ一手なのに印象は全く違う
そしてこの一手はパチン!とした駒音の一手だ
もはや勝ちを読み切っているのだろう
あとは一気に決めにかかる
鮮やか、と言うしかないほど華麗に決める
この局面で豊島王位の投了となった。
熟練の勝負師、木村九段に軍杯が上がった。